最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)425号 判決 1948年7月22日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人安藤一二夫の上告趣意について。
犯罪の敢行を謀議した共犯者は、たとい犯罪の現場においては唯見張をなしただけでその実行行爲に直接加擔しなかったとしても、他の共犯者の実行行爲を介して自己の犯罪敢行の意思を実現したものと認められる場合には、なお共同正犯たるの責を免れ得ないものであることは既に當裁判所の判例とするところである。然るところ原審の確定した事実によれば被告人は第一審相被告人早瀬源治に誘われ同人の所持する刄渡り二尺三寸餘の日本刀を使って他人を脅迫して金品を強奪しようと企て、共謀の上前後二回に亘り法定の除外事由がないにも拘わらず早瀬において右日本刀を携帶して他家に侵入し家人に對しその抜身を突きつけ「静にしろ金を出せ騒ぐと斬るぞ」などと言って脅迫し金品を強取し(但し一回は未遂)被告人はその間屋外にあって見張をしたというのである。從って論旨の主張するように被告人は右日本刀を嘗て手にしたことがなかったとしても、共犯者早瀬の行爲を介して法定の除外事由がないにも拘らず、日本刀を携帶使用して他人を脅迫する意思を実源したものといゝ得るのであるから、原審が被告人を所論銃砲等所持禁止令違反として所斷したのはむしろ當然であり、原判決には所論のような違法はない。論旨は理由なきものである。
よって刑訴第四四六條に從って主文の通り判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 齋藤悠輔)